土砂災害防止法

土砂災害防止法とは

土砂災害のおそれのある地域に着眼し、警戒避難体制の整備や開発行為の制限等ソフト対策を規定したものです。

正式名称：土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律

背景及び経過

日本全国で土砂災害危険箇所は約52万5千箇所存在しており、近年の降雨量の増加に伴い、土砂災害も年々増加しています。
土砂災害への対策としては、砂防三法（砂防法・地すべり等防止法・急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律）により、砂防えん堤工や斜面対策工などハード整備を行っていますが、平成11年6月の集中豪雨により発生した広島災害が契機となり、土砂災害の発生するおそれがある区域の周知、警戒避難体制の整備、開発行為の制限、建築物の安全性の強化等の必要性等が強く認識され、平成13年に施行されました。

目的

土砂災害から国民の生命及び身体を保護するため、

• 土砂災害が発生するおそれのある土地の区域を明らかにする。
• 当該区域における警戒避難体制の整備を図る。
• 一定の開発行為を制限する。
• 建築物の構造規制をする。

等により土砂災害の防止のための対策の推進を図り、公共の福祉の確保に資することを目的としています。

土砂災害防止法の流れ

警戒区域の指定にかかる基礎調査から住民への周知の流れは次のとおりです。

1. 都道府県による基礎調査の実施
2. 基礎調査結果を市町村長へ通知（※その後住民説明会の実施）
3. 区域指定について市町村長への意見聴取
4. 土砂災害警戒区域等の指定
5. 公示図書の市町村長への送付
6. 公示図書の縦覧
7. 市町村地域防災計画に警戒避難体制を定める
8. 警戒避難に関する住民への周知

国・都道府県・市町村の役割

• 国： 土砂災害防止対策の基本指針の作成
• 都道府県： 基礎調査の実施、土砂災害警戒区域等の指定、緊急調査の実施
• 市町村： 市町村地域防災計画に警戒避難体制を定める
  警戒避難に関する住民への周知

土砂災害防止法に係る警戒区域等の指定

土砂災害防止法に係る警戒区域等

土砂災害警戒区域（通称：イエローゾーン）・・・土砂災害のおそれがある区域

• 情報伝達、警戒避難体制の整備
• 警戒避難に関する事項の住民への周知

土砂災害特別警戒区域（通称：レッドゾーン）・・・建築物に損壊が生じ、住民等の生命に著しい危害が生じるおそれがある区域

• 特定開発行為に対する制限
• 建築物の構造規制
• 土砂災害時に著しい損壊が生じる建築物に対する移転等の勧告
• 勧告による移転者への融資、資金の確保

土砂災害の種類

土砂災害とは、土砂の移動が原因となる自然災害をいいます。
毎年、豪雨や地震、火山活動等に伴い「土石流」「急傾斜地の崩壊（がけ崩れ）」「地滑り」等の土砂災害が多発しており、自然災害による死者・行方不明者のうち約半数が土砂災害によるものとなっています。

土石流

山腹が崩壊して生じた土石等または渓流の土石等が水と一体となって流下する自然現象。

<土砂災害警戒区域>（イエローゾーン）

扇頂部（※）より下流の河川の部分及び隣接する区域で、土地の勾配が2度以上のもの
※上流勾配の急な河川が扇状地に流入する地点

≪土砂災害特別警戒区域≫（レッドゾーン：数式により算出）

土砂災害警戒区域のうち土石流により建築物に作用すると想定される力が、建築物の耐力上回る区域
（土石エネルギー≧建築物の耐力）

急傾斜地の崩壊（がけ崩れ）

傾斜度が30度以上ある土地が崩壊する自然現象。

<土砂災害警戒区域>（イエローゾーン）

• 傾斜度が30度以上で高さが5m以上の土地の区域
• 急傾斜地の上端から10m以内の土地の区域
• 急傾斜地の下端から当該傾斜地の高さの2倍以内
  （50mを超える場合は50m）の土地の区域

≪土砂災害特別警戒区域≫（レッドゾーン）

土砂災害警戒区域のうち急傾斜地の崩壊に伴う土石等で、建築物に作用すると想定される力が建築物の耐力を上回る区域
（土石エネルギー≧建物の耐力）

地滑り

土地の一部が地下水等に起因して滑る現象
またはこれに伴って移動する自然現象

<土砂災害警戒区域>（イエローゾーン）

• 地滑りしている区域または地滑りのおそれのある区域
• 地滑り区域下端から、地滑りの長さ（L）の区域
  （250mを超える場合は、250mまで）

≪土砂災害特別警戒区域≫（レッドゾーン）

地滑り区域下方の土地の中で移動による力が通常の建築物の耐力を上回る区域
（土石エネルギー≧建物の耐力　最大60m）